ソフトウェア開発費の見積り、プロジェクトマネジメント、
発注者と受注者の間の合意形成等に参考となる情報を不定期に掲載していきます。
ファンクションポイント上級資格 CFPS Fellow への道
第4回 CFPS Fellow 取得
2025.08.28
著者:
株式会社SOFTEST 代表 倉重 誠
CFPS (Certified Function Point Specialist) を取得した1996年以降、CFPS が業務に役立つ場面は幾度となくありました。筆者は、お客様と自社の間で見積りに関する見解の相違が発生しているプロジェクトに出向き、見積りの合意点を見出す、という技術サポートを何度も経験してきました。見積りの合意点を見出すためにファンクションポイント (FP: Function Point) を適用することが多く、CFPS という資格によって、FP に関するお客様との会話を円滑に進めることができました。
お客様から見ると、ベンダー側に所属する筆者はベンダーに有利な方向に結論を持っていくのではないか、と思われても仕方ないところがあるので、このようなサポートを実施する際には、筆者は常に中立の立場で会話しました。特に自社の見積りに妥当性があるケースでは、CFPS を有していることでお客様が真摯に耳を傾けてくださった、と感じることが多かったです。
FP に20年以上携わり続けてきた2016年7月、CFPS を運営する IFPUG (International Function Point Users Group) から突然、このような通知が筆者に届きました。
『あなたを CFPS Fellow に認定します』
CFPS Fellow とは、CFPS を20年間保持した人に与えられる CFPS の上位資格です。筆者は日本およびアジアで初めての CFPS Fellow 取得者であり、現在でも CFPS Fellow は全世界に38名しかいません。FP を日本で一番よく知っているのは自分だという自負はありましたが、この資格により、筆者は名実ともに日本一の FP 精通者という称号を手に入れたと感じました。
CFPS Fellow の実務的なメリットは、CFPS が無期限になることです。3年ごとの再受験は、不合格により資格を失効するリスクがありますので、それがなくなり恒久的に CFPS を保持できることは、とても大きなメリットです。20年間、しっかりと CFPS を維持してきて良かったと実感しています。
CFPS Fellow を取得したことで、業務上のメリットも CFPS 保有時よりさらに大きくなりました。あるプロジェクトで、自社の見積りに対してお客様が大きな不信感を抱いてしまい、自社のプロジェクトマネージャー(PM)が対応に苦慮し、筆者にサポートの依頼が舞い込みました。役員クラスのお客様 PM を前に、筆者が CFPS Fellow であることや、自社の見積りの妥当性を丁寧に説明したところ、見積りに納得していただき、さらに見積りに関する様々な意見交換を行うことができました。自社の PM から「お客様 PM の考え方が分かり、今後のプロジェクトが進めやすくなる」と感謝の声をもらいました。当初の目的だった見積りの認識齟齬を解消したことに加え、お客様との関係改善にも寄与することができたと思います。
このケースでは、筆者が CFPS Fellow だったからこそ、役員クラスの方とも対等に会話することができたのだと思います。関係性が悪化した状況でも、客観的なスキルの証明を持っていると、技術にフォーカスした会話が成り立ち、それが状況を打開する一手になる好例でした。CFPS の頃からその効果は感じていましたが、このプロジェクトでは CFPS Fellow ならではの強みが発揮できたと思います。
別のケースを紹介します。あるユーザー側の企業で FP のセミナーを行い、筆者が CFPS Fellow として FP を詳しく紹介したところ「FP を本格的に導入したいので、日本一の人にサポートしてほしい」と言っていただき、その後数年間にわたり、そのお客様の FP 導入をサポートさせていただきました。近年、ユーザー側の企業において、見積り力を強化したいというニーズが高いですが、FP は機能要件を点数化するしくみであり、ユーザー側の SE でも自ら計測することができるので、見積り力を強化する上で最適なメトリクスだと思います。
CFPS Fellow 取得は、気持ちの面にも変化をもたらしました。FP の普及推進に力を注ぎたい気持ちがそれまでよりも強まり、FP に関係する仕事をもっと増やさねば、とも思いました。その思いが、会社を退職して独立に至る1つのきっかけになりました。
FP はキーワードとしての知名度はわりと高いと思いますが、その本質を理解している人や、十分な実践経験を積んでいる人はまだまだ少ないのが現状だと感じています。技術の変遷がさらに激しくなっている現代において「定量的な見積りを行いたい」「生産性を明確にしたい」というニーズはますます高まってくるはずで、見積りや生産性の要素技術である FP は、日本で本格的に紹介されてから30年経った今でも、いえ、今だからこそ、ITシステム/ソフトウェアにとって大切な役割を担っていくと確信しています。
※このコラムは今回が最終回です。
日立製作所で、ITシステム/ソフトウェア開発の開発支援・プロジェクトマネジメント支援の技術開発や定着化に従事。専門分野は、見積、開発データ測定・活用、ファンクションポイント(FP)。2018年、株式会社SOFTESTを設立し、専門分野の経験を生かしたITコンサルティングを推進中。30年間、社外活動でFP普及に尽力。日本ファンクションポイントユーザ会(JFPUG)で技術担当役員、事務局長などを歴任。JFPUGから改称したITシステム可視化協議会(MCIS)ではFP委員会の委員長に着任。
株式会社SOFTEST:https://www.softest.co.jp/