ソフトウェア開発費の見積り、プロジェクトマネジメント、
発注者と受注者の間の合意形成等に参考となる情報を不定期に掲載していきます。
ファンクションポイント上級資格 CFPS Fellow への道
第3回 CFPS の更新と試験問題翻訳
2025.08.21
著者:
株式会社SOFTEST 代表 倉重 誠
1990年代の後半は、クライアント/サーバー(C/S)システムの急速な発展や、オブジェクト指向開発の普及などにより、ファンクションポイント (FP: Function Point) に取り組むエンジニアも増えていきました。CFPS (Certified Function Point Specialist) の取得に意欲を示す人も増えていったのですが、当時は米国で開催される IFPUG (International Function Point Users Group) カンファレンスに参加するしか、取得する機会がありませんでした。そこで、日本ファンクションポイントユーザ会(JFPUG、現 MCIS:ITシステム可視化協議会)が主体となり IFPUG の協力を得て、CFPS 試験の日本開催が実現しました。
英語の試験を IFPUG から郵送してもらい、日本で試験を実施し、答案用紙を IFPUG に返送して採点してもらう、という運用で、2001~04年に毎年1回ずつ開催されました。渡米せずに CFPS 試験が受験できるということもあり、4年間で123名が受験されましたが、合格して CFPS を取得できたのは25名。合格率は20%にとどまりました。FP 計測の経験が豊富なのに合格できない方も多く、やはり英語の壁が立ち塞がったのです。
CFPS は3年間の有期限資格で、再受験・再合格によって資格保持期間を更新することができました。他にも資格を更新する手段は用意されていたのですが、日本では再受験が最も典型的な方法でした。筆者は、2001年と2004年に上述した日本での試験に合格し、CFPS 試験に3回合格した最初の日本人になりました。会社の業務でも、ずっと FP の計測や適用の活動に携わっていました。
筆者は幸いなことに、業務経験も資格更新も続けてこられたのですが、CFPS を一度取得した方が資格更新を断念される状況も発生し始め、このままでは新規取得者も資格更新者も減っていってしまう懸念がありました。そんな頃、CFPS 資格を運営する IFPUG が、試験問題を翻訳して開催する仕組みを考案しました。この仕組みを活用すれば英語の壁がなくなるという大きなメリットがあることから、JFPUG で CFPS 試験翻訳活動が始まりました。
この仕組みでは「試験問題の翻訳は CFPS 取得者が実施する」というルールが定められていました。最初に翻訳試験を開催した2006年の時点では、上述した資格期限が切れた CFPS が多かったこともあり、CFPS 保有者が数名しかいない状況でした。そこで、筆者を含む3名が CFPS 試験の翻訳を実施したのですが、これが思いのほか難航しました。
CFPS の試験問題の中には「計測マニュアルの記述として正しいものはどれか?」という類いの問題があるので、計測マニュアルの訳文を “一字一句変えずに” 試験問題の訳文に反映しなければならないのです。これは翻訳と言うより、計測マニュアルの訳文の当てはめと言うべき作業であり『試験問題の英文が計測マニュアルのどの箇所の記述かを特定し、その箇所の訳文を探し出す』という、なかなか時間と根気の要る作業でした。
また、試験問題なので、不適切な翻訳によって解答をミスリードするようなことがあってはいけません。英文の係り受けの確認や、微妙なニュアンスの訳出などにも細心の注意を払いました。翻訳を実施した3名がお互いの会社の会議室に持ち回りで集まり、上述の観点でレビューやブラッシュアップを重ねていく日々。平日の業務終了後、夜10~11時まで打ち合わせを行った日が何日あったのか、思い出せないほどです。
そんな苦労の甲斐あって、2006年から日本語による CFPS 試験が始まりました。この試験を年に一度は開催できるように、毎年、CFPS 保有者からボランティアを募り、毎年変わる試験問題の翻訳が行われました。年々、翻訳のノウハウが蓄積され、翻訳作業は少しずつ効率化していきました。CFPS の皆さんのご協力のおかげで、日本語試験は毎年のイベントとして定着し、CFPS の新規取得や更新も増えていきました。
日本語の CFPS 試験は15回開催され、合格率は44%となり、英語での実施より大幅に上昇。CFPS 新規取得者は現在までに60名を超え、3回、4回と合格して CFPS を継続更新する方も現れています。こういう状況を見ると、最初の翻訳の苦労が報われたと感じます。日本語試験は現在、オンライン試験でいつでも受験可能な状態になっています。このオンライン化も、多くの CFPS の皆さんの協力によって実現しました。
筆者は、2008年に日本語試験を受験し4回目の合格を果たすと、その翌年から開始された英語のオンライン試験に3回合格しました。トータルで7回合格し、CFPS を保持し続けました。業務では自ら FP を計測する機会が減っていき、他者の計測のサポートやレビューをする仕事が増えていきましたが、FP の実践者としてのスキルを維持していることを証明したかった思いもあり、筆者の原点とも言える CFPS の更新を続けました。
試験問題の翻訳に関しては、2006年の初回のみならず、その後何度も翻訳に携わらせていただきました。翻訳は、試験問題にとどまらず、FP 計測マニュアルの翻訳活動にも参画しました。翻訳によりマニュアルの内容を熟知したので、マニュアルのニュアンスや詳しい読み解き方を伝えるため、JFPUG で「マニュアル精読会」というイベントを開催しました。また、CFPS 試験の勘所、事前対策、当日対策などの受験ノウハウを、社内外を問わずお伝えしてきました。これらの活動を通じて、日本国内の CFPS 取得者増加に少しは貢献できたのではないかと考えています。
※このコラムは全4回を予定しています。
日立製作所で、ITシステム/ソフトウェア開発の開発支援・プロジェクトマネジメント支援の技術開発や定着化に従事。専門分野は、見積、開発データ測定・活用、ファンクションポイント(FP)。2018年、株式会社SOFTESTを設立し、専門分野の経験を生かしたITコンサルティングを推進中。30年間、社外活動でFP普及に尽力。日本ファンクションポイントユーザ会(JFPUG)で技術担当役員、事務局長などを歴任。JFPUGから改称したITシステム可視化協議会(MCIS)ではFP委員会の委員長に着任。
株式会社SOFTEST:https://www.softest.co.jp/